数年内のパラダイム・シフトで起こること:レイ・ダリオ

 

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、福音あるいは大量破壊兵器となりうる重要コラムを公表した。
多くの投資家の頭の中にモヤモヤ居座り続けるリスク・シナリオについて、以前より具体的な言及がなされている。

現在のパラダイムを把握し、それが持続不可能になった場合やどのような時に持続不可能になるかを検討し、持続不可能なものが終わる時にどのようにパラダイム・シフトが起こるかを具体的に予想する。

ダリオ氏が自身のSNSで、投資にかかわるプリンシプルズ(原則)の1つを語っている。
グローバル・マクロ分野の投資家としての50年のキャリアから、市場が概ね10年ごとに機能のしかたを変化させることを見出し、ダリオ氏はそれぞれの時代のモードを「パラダイム」と読んでいるという。
トーマス・クーンが『科学革命の構造』で唱えたパラダイムと比べると、そのスパンはだいぶ短いが、人々の心を硬直的にしてしまうという意味では確かに似通っている。

ダリオ氏は、市場・経済のパラダイム・シフトで起こることをこう表現する。

(『パラダイム』に)ほとんどの人が順応し、ついには外挿を始める結果、その予想は行き過ぎてしまう。
結果、新たなパラダイムへのシフトは前のパラダイムにおける市場のあり方に似るのではなく、むしろ反対のあり方を示すようになる。

人々があまりにも足元のパラダイムを信じ、順応してしまうため、振り子の振り幅が大きくなってしまうのだ。
結果、パラダイム・シフトが起こると大きなサプライズとなり、振り子は遠くにまで振れてしまう。

ダリオ氏はこうした荒波の中でうまく投資の舵取りを行う方法が2つあるとし、それぞれの考え方が自社の看板ファンドで採用されていると説明している。
ダリオ氏に敬意を示し、この少々コマーシャル的な部分も紹介しておこう。

  • ピュア・アルファ: 変化を予想し、アクティブ運用で乗り切る。
  • オール・ウェザー: リスク・パリティ等の考えを用い、市場・経済の変化を受けにくくする。

ここまで読まれた読者はさぞかしワクワクしていることだろう。
こういう話をしたのだから、ダリオ氏は近いうちにパラダイム・シフトが起こると予想しているはずだからだ。
しかし、もう少し待ってほしい。
ダリオ氏の話の長さは同氏の誠実さの表れだからだ。
ダリオ氏はここから過去100年について、10年ごとに社会環境・市場動向を振り返っている。
いつもながら丁寧な仕事であり、米社会・市場に疎い人は頑張って原文に目を通すといい。
社会的背景を知らずに米市場に投資しようとすれば、それはかなり危険なことだ。

そして、ついにダリオ氏が足元(2009年以降)のパラダイムを書いている。
その主要な要素は:

  • 各国中央銀行が永遠には続けられない量的緩和を実施
  • 金融緩和が資産買い入れと金利低下という2つのルートで資産価格を押し上げ
  • 利下げはゼロ金利制約へ、量的緩和は効果が低減
  • 資産価格は上昇し、将来のリターンは低下、さらなる資産価格上昇の足かせに
  • 金融緩和がマイナス利回りを生み出し、人々は金など代替的なマネーを求めている

こうした足元のパラダイムに対し、数年のうちにパラダイム・シフトが起こる可能性が高いのだという:

1) 経済が軟化した時に中央銀行が講じられる市場・経済刺激策が尽きる。
2) 巨額の債務・負担(年金・医療保険)が顕在化し、資産による裏付けを欠く。

金融政策が限界に達するから財政政策を発動せざるをえなくなる。
これは効果こそ上げるだろうが、政府の債務を増加させることになる。
景気刺激策とは別に政府の債務・負担は増大するから、財政悪化はダブル・パンチになる。

ダリオ氏はパラダイム・シフトが起こるきっかけを想定している:

a) 実質リターンがあまりにも低いために、債務を保有している投資家が保有を望まなくなり、何か他のよさそうなものに乗り換える。
b) 同時に、債務・負担に引き当てるマネーが巨額必要となり、これが『大きなスクイーズ』を引き起こす。

各国政府は財政インフレや金利上昇を恐れ、中央銀行に低金利政策を望むはずだ。
財政が悪化する政府の債務が低リターン/マイナス・リターンで保有される構図は持続しえないだろう。
政府はお金を必要とするのに、投資家は政府にお金を貸すのを避けるようになる。

ダリオ氏は、この資金ギャップをどう政府が埋めるかまで予想している:

巨額の財政赤字とその貨幣化、通貨安、大幅増税の組み合わせになる。
こうした状況は、持てる資本家と持たざる社会主義者の対立を大きくするだろう。
この期間に最もありそうなことは、債務の保有者が、弱くなっていく通貨建てで極めて低いかマイナスの名目・実質リターンしか受け取れないことだ。
これは、デファクトの資産税と言える。

このコラムはあまりにも核心的なテーマを突いており、面白い。
考えるべきポイントが多くある。
佳境ではあるが、本稿はいったんここで終わりにしておこう。

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